ダリ展(新国立美術館) 4
働く者の多くは、なぜ働くのか?と問われれば、
働くことが生きるために重要だからと答えます。
働くことが生きるために重要というよりも、
組み込まれた人生の設計図の中に生きて働き、
人の役に立って次の時代に
命をつないでいくことが必要だったからです。
われわれが生きている間は、
常に仕組まれた、構図の中に生かされている。
そんな感覚で時を過ごしていました。
そんな中で、私は危惧している問題を持ちました。
それは、私が描いている絵の中にも表しているとおり、
放射能の汚染です。
(ダリの作品の中には、「ラファエロの聖母の最高速度」、
「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」、
「ビキニの3つのスフィンクス」
「パイ中間子の天使」というような、
放射能を示唆する作品が多く見られる。)
広島に落とされた放射能、
さらに原発で汚染が拡がっている放射能、
それらは、やがてはこの地球を汚して、
次の時代に移り変わっていく破壊的な事柄であり、
このことをきっかけにして、世の中が大きく変化していくことを、
あなたがたに伝えなければなりません。
世の中の悲しい現実とともに、お伝えしなければならないことは、
私にとっても悲しいことなのです。
私の絵が素晴らしいという評価を得ているのは、
私が素晴らしいのではなくて、
私には空間的な感覚があって、
それら思いっきり表現したところ、
それに共感する人々がすばらしいと評価してくださった。
ですから、すべての人が、
私の絵をすばらしいと感じるわけではありません。
ここが、あなた方と共通する事柄であると思います。
世の中に、認められるということは、
すべての人に認められるということではありませんから、
結果的にターゲットが絞られてくることにつながります。
私と共通しているところは、そこのところです。