シャボン玉石けん 2
随分間が空いてしまいましたが、シャボン玉せっけんはこんな所でも使われています。
今回の地震でも、随分火事が発生しましたが、
こうした被災地では消火栓が使えない事が多いそうです。
そこで、消防車に積んでいるわずかな水で消火する事を、
シャボン玉せっけんは、可能にしたそうです。
火を泡で覆い、酸素を絶って消火する。
何の事はない、今までも山林火災などで行われてきた手法ですが、
今までの消火剤は化学物質で、後処理が大変。
山林火災などの広い範囲の火災では、
何年も自然には戻らないそうです。
ところがシャボン玉せっけんで創った自然消火剤なら、
消火後もすぐ土壌が元に戻り、
なおかつ、なんと1/17の水で消火出来るという事です。
産学官連携で開発した泡消火剤
海外市場にらみ林野火災用を研究
シャボン玉石けん株式会社、北九州市消防局、北九州市立大学、株式会社古河テクノマテリアルの連携で開発し、2007年10月に「ミラクルフォーム」の名前で商品化された石けん系の泡の消火剤。放水量が従来の約17分の1で済むうえ、環境負担を大幅に低減している。新たな用途として、海外の大きな市場をにらみ林野火災用の研究開発に乗り出した。
◆ | 環境への負荷の小さい消火剤 |
阪神・淡路大震災では285件の出火があり、7,483棟が損傷、559名が火災で亡くなった。消火栓や地下水槽、水道管も破損して消火用の水を確保できなかった。これを教訓に北九州市消防局が少ない水でも効率的に消火できる消火剤の開発に乗り出した。環境都市の北九州市としては消火効率だけでなく、土壌や河川環境への負荷の少ない消火剤の実現を目指した。そこで、地元企業であり無添加石けんメーカーのシャボン玉石けん株式会社に声が掛かった。開発協力の打診を受けた当時社長の森田光德は「ぜひやらせてほしい!」と参加を即回答した。なぜならば、森田光德は、自分の湿疹(しっしん)の原因が当時自社で販売していた合成洗剤だと分かると、すべて無添加石けんに切り替えた人物であり、「健康な体ときれいな水を守る」を企業理念とするメーカーだったからである。
2001年に北九州市消防局、北九州市立大学、株式会社古河テクノマテリアル、そしてシャボン玉石けん株式会社の連携による石けん系消火剤の開発がスタート。苦労の末、2007年10月、一般建物用消火剤「ミラクルフォーム」が商品化され、株式会社モリタの専用消防車「Miracle CAFS Car」とともに販売開始した。
全く新しい消火剤の開発は難航した。われわれが持っていない技術を要し、発泡性や泡の持続性、安定性など、多くの厳しい条件をクリアする必要があった。試作品を作っては古河テクノマテリアルに評価してもらい、改良を繰り返した。商品化に至るまで、800種類以上もの試作品を作ることとなった。 開発初期の試作品の消火実験では、容易に消火でき幸先の良いスタートだったが、競合他社品と同じ濃度で同様の消火実験を行うと全く消えない。低濃度でも火が消えるように注力したのが発泡性や泡の持続性の向上である。そのキーとなるのが脂肪酸組成である。また、石けんカスが泡を消す働きがあるため、これをどのように防止するかも大きな課題となった。これらの課題をクリアしようとすると、安定性が悪くなることがある。消火剤の固化やゲル化が起こり、ハンドリングの良い消火剤とはならない。そこで、安定性を向上させるため、希釈剤の検討を行った。開発では、「発泡性と泡の持続性」――経時安定性の絶妙なバランスを保つことが困難を極めた。最終的に、これらを最適バランスにし製品化に成功した。 |
◆ | 採用は全国に広がる |
ミラクルフォームを搭載する消防車が初めて採用されたのは北九州市とさいたま市である。その後、北海道から沖縄県まで、鳥取県以外の全国の都道府県の市町村へ採用が広がった。
現在、年間出荷量は約30トンであるが、ビジネスとしてはまだまだ。当面、年間出荷量100トンを目指している。
◆ | 米国の林野用消火剤の商品化を目指す |
新しい分野への参入を目指し、2009年4月に北九州市立大学らと林野火災用消火剤の研究もスタートした。この林野火災用消火剤は環境保全のため消火剤の基準が厳しい米国での需要が期待される。まずは同国の林野庁指定の林野用消火剤の基準(QPL)をクリアすることを目指している。米国の林野火災用消火剤は、他国でも多く使用され、QPLの規格のクリアが消火剤試用のファーストステップになっている。この基準をクリアすれば、林野火災が頻繁に発生している他国での需要も大きく見込める。
QPLの中には、難燃剤やクラスA泡薬剤などがある。当社が開発している林野火災用消火剤は、クラスA泡薬剤に属し、その定められた規格に適合するか否か確認中である。規格としては、急性経口毒性、急性経皮毒性、眼一次毒性、皮膚一次毒性、魚毒性、生分解性、粘度、流動性、発泡性、濡れ性、金属腐食、非金属腐食など数十個の項目があり、実際の使用濃度の水溶液だけでなく、原液での実験もあり、実験数としてはかなり多くある。
現在は、その規格の内容を精査しており、実験方法などが分かっている一部の試験に関して実験をしている。課題は、QPLの全容が明らかとなっていないこと、また、QPLに適合したとしても米国以外で通用するのか分からないこと。世界に広めていくためには、さらなる情報収集が必要になるだろう。
なお、2010年10月、林野火災対策を国家の重要プロジェクトとしているマレーシアにおいて「Aerial Emergency Response International Conference & Exhibition(航空緊急対応国際会議と展示会)(以下、AERとする)」に参加した。同会議において一般建物用消火剤「ミラクルフォーム」と石けん系林野消火剤を発表した。石けん系消火剤の世界へのPRもひとつの足掛かりとし、今後の林野火災フィールドにおけるビジネスの筋道を立てる。
AERには、アジアからはマレーシア、日本、中国、シンガポール、ほかにも米国、イタリア、フランス、エチオピアなど世界各国から集まった。世界的にもGreen Productsには非常に興味があると思われるが、高生分解性、低環境毒性をセールスポイントにしている「ミラクルフォーム」は、消火剤におけるGreen Productsと言えるだろう。合成界面活性剤を使用している泡消火剤はあるが、環境性能をうたう消火剤はほとんどない。
今回の学会では、「ミラクルフォーム」は米国やカナダなどの消防関係者から興味を持たれた。マレーシアの消防関係者には、すぐにでも使用したいというほど興味を持っていただいた。マレーシアではノズル部分で泡にする別のシステムをとっており、今後はこのシステムについても調査、検討していきたいと考えている。
環境にやさしい石けん系の消火剤「ミラクルフォーム」は以下のような特徴がある。
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◆ | おわりに |
消火剤という新しい分野で、かつ、産学官連携の研究開発という当社にとって新たな試みを行い、成功した。
元々固形石けんや粉石けんの開発・製造の技術とノウハウは持っていた当社だが、消火剤の開発には、火を消すための泡に関する研究だけでなく、液化した石けんを安定させる技術についても研究を行った。これらの技術や経験は、当社の体や毛髪用の化粧石けんや洗濯用液体石けんの商品開発や製造に転嫁することができた。また、大学と連携することで、限られたリソースの中、大学の充実した研究設備を活用し、理論的な裏付けをもって研究開発を行うことができた。
産学官連携の消火剤共同研究と製品化で得られた技術や経験は、研究員の人材育成や組織体制強化など弊社の重要な財産にもなっている。