さくら
桜を見ると、時々思い出すことがあります。
それは20歳くらいの時に読んだ小説です。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」という短編小説です。
話の内容はほとんど覚えていないのですが、
いまだに桜を見ると思い出すのは、
よほど受け取るものに衝撃を覚えたからなのでしょう。
聞くところによると、東京大空襲の死人を、お花見で有名な
上野の満開の桜の下で焼いているのを見たのが、
この小説を書くきっかけとなったとのことです。
この小説の見えない裏側で、安吾の強烈な体験から、
ほとばしり出る命の叫びとでも言うようなものを受け取っているのでしょう。
また暇なときにでも、読み返してみたいものだと思っていますが、
いつになったら暇をいただけるのか、
老体にムチ打って働いております。