ダリ展(新国立美術館) 3
私が、とらわれたのは、愛情と「しそう」。
「しそう」とは、考えではなく、死ぬこと。
常に人は、生まれて、生きて、愛し合って死んでいく。
そういう人の生涯を感じておりました。
すべて、生きている者たちの意識、感情の中には、
死んだ者の感性が息づいている。
つまりは、それは輪廻転生している「意識」が
存在するということだったのですが、
そういう生きて死ぬことの感覚が、
生きている私の意識の中に
大きなウエートを持って存在をしていました。
その当時には、自分自身の感覚としては、
とても不思議で理解しがたい感情だったのです。
それらは、白い空間と黒い空間が一緒に存在するとか、
上下、左右の距離が同時に存在するとか、
時空が、同時に存在するという
貴方の考えと相通じる考えがありました。
そういう、次元の中の感覚は、
神上がった今現在では
当然と言えば当然の感覚なのですが、
当時、理解もできない空間の感覚を感じることができたことは、
私にとって幸運なことでした。
幸運だったことを、技術的な力を得て、
絵画にぶつけるように表現したことが、
多くの人々の共感を得たのです。
ということは、私の感じた空間と時間の概念、
生まれることは死ぬこと、生きることは死と共に生きること、
という概念は、誰しもが持ち得ている感覚である
ということに通じます。